『私を信じたら、あなたの事を救ってあげる。』って、夢に出てきた女神様が僕に微笑んだ。
ん、僕の夢だけあって、僕の好みを掌握している。
なんたって女神様はだもん。

ついでに言うと、僕は今、救われたいような心境ではない。
別に苦しんでもいないし、これと言った悩みもない。
まあ、小さい問題や悩みはあるさ。
でも 女神様の出現を願って神に祈らなければならないような、そんな苦しい状況にはない。
なのに、なぜ、こんな夢を見るのだろう?
僕にはそのことの方が気になった。

女神は定番ともいえるギリシャ神話の神々が着ているような衣を纏っている。
白く滑らかそうな布は、彼女にとても似合っている。
片方だけの肩に布が寄せられていて、もう片方の肩は露出している。
袖はなく両腕が出て、その細さと白さが布に隠れている部分を想像させる。
ウエストでその布を前後から身体に巻きつけて、ベルトで固定しているようだ。
当然上半身には下着はつけていないだろうな。
僕は女神様を見ながら、不謹慎なことを考えていた。

そんな視点で見始めると、横の脇の方から胸の一部、その柔らかな丸みがわずかだが覗いている。
の白い肌を思い出してしまう。
なんだか別の意味で救われたくなる。
どうせ夢なんだからと、僕はそれを口にしてみた。
「信じて救われるにはどうしたら、貴女をどう信じたらいいのですか?」と。

『私の姿はあなたの愛しい女性の姿をしているはずです。
私を彼女だと思って、貴方の想いを告白しなさい。』
なんだかベタな展開だ。
僕のファンタジー力ってその程度のものか?
ちょっと情けなくなる。
でも、ま、理数系分野専門だから・・・・と、その展開を何処かであきらめる僕がいる。
別に告白が嫌なわけじゃないけれど、何で夢の彼女にそんな事を言う必要があるのか。
納得がいかない。

どうせなら言うなら、に直接話したい。
僕の言葉に嬉しそうに微笑んで赤くなったりする彼女を見る方が、よほど楽しいし幸せな気分になる。
その後だって、の匂いに包まれて彼女を目いっぱい愛したい。
目の前の女神様に言ってもなぁ・・・・。
「どうせさ、愛を告白するならにしたいんで、遠慮しておきます。
僕を救ってくれるのは、女神様じゃなくてだから。」
不敬な態度と言葉で女神に僕の気持ちを伝えた。
それを聞いて女神様はただ微笑んだ。

と、そこで目が覚めた。
寝ている場所は自分の部屋の自分のベッド。
時計を見れば、とのデートを約束している時間まであとわずか。
どうやら僕はうたた寝していたらしい。
「なんだかなぁ〜。」と思わずつぶやいて、ベッドから起き上がる。
への愛情は十分に伝えていると思ったけれど、まだ足りないのだろうか?
「それならそれで、今日はたっぷりと・・・だな。」
そう一人語って、上着を手に取った。





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2005.06.08up