『約束して、絶対に戻ってくるって・・・・』
画面から聞こえてくる女優さんの声に、思わず目頭が熱くなる。
じわっと滲む涙のせいで、鼻の奥がむずむずしてくる。
パチパチと数回瞬きをして、何とか画面はゆがまないように見続けるものの、感動的なシーンが続くので、涙は我慢が出来ない。
瞬きのせいで瞳から溢れた涙は、雫となって頬を伝う。
そっと横からティッシュが差し出された。
しかも箱ごと。
箱を受け取って膝の上に置くと、続けざまに2回引き抜いて涙を拭き、音をさせないように気をつけながら、鼻もかむ。
泣いている自覚があるので、絶対に横にいる悠斗の方は見ない。
恥ずかしい・・・きっと笑ってる。
見逃したくないこともあって、画面を見たままだ。
『必ず帰ってきて。』
相手の俳優さんの胸に抱かれながら、女優さんはさらにすがった。
エンドロールを見てテーマ曲を聴きながら、悠斗が淹れてくれたお茶を飲んだ。
泣いた後だから、水分が嬉しい。
「は泣き虫だよね。
悲しいと言っては泣き、嬉しいと言っては泣いてるもんな。
映画見てが泣かなかったことの方が珍しい位だからね。
こんな風に家で見て泣くのは良いけどさ、映画館だとちょっとね。」
本当のことだから反論できなくて、湯飲み越しに悠斗を睨んだ。
「だって・・・・・」「だって?」
「でも・・・・・」「でも?」
「我慢できないんだもん。
家ではともかく、映画館で泣くのは出来るだけ我慢する。
それじゃ駄目?」
その前に泣いてた上に睨んだ後だから効果は薄いけど、ちょっと可愛い子ぶってみる。
「ん〜、そうだなぁ。」
悠斗が考える素振りで、湯飲みをテーブルの上に置き、こっちへおいでと言うように手招きした。
隣に移動して座ると、すぐに悠斗の長い腕の円の中に収められた。
抱き枕のように、クッションのように、縫いぐるみのように、悠斗はいつも私を抱き寄せる。
「まあ、きっと無理だから、無駄な努力はしなくてもいいよ。
が泣き虫なのは、ちゃんと分かっているからさ。
僕としては、いつまでもそのままのの方がいいかな。」
抱き寄せられた腕の中、そんな殺し文句を耳元に囁かれたら、どういう反応したらいいのか、本当に困る。
囁かれた耳が熱を持ち始めたのを自覚すると、クスクスと笑い声が聞こえた。
「ったら照れてるんだ。
いつまでも慣れないね。
でも、それでいいよ。」
「どうして・・・・外で泣くと、悠斗が困るんでしょ?」
「ん〜、そりゃね。
でもそんな慣れないところが好きだって言ったら、
はどうする?」
悠斗はそう言って、耳にキスを落とした。
そのまま離れずに、耳たぶを唇だけでもてあそぶ。
普通にしている息さえも間近でされると、刺激になってしまう。
返事に困っているうちに、悠斗の腕から逃れなれなくなっていた。
(C)Copyright toko. All rights reserved.
2005.02.09up
|