NO.90 イトーヨーカドー





Scene 1


「あっ三蔵、そんな事しちゃ駄目。」

「そんな事言って、こうしないと駄目だろ?」

「無理に引っ張ると・・・・あぁっ・・・・。」

「大丈夫だ。」

「もう、強引なんだから・・・」

「こういうのは、強引な位で丁度なんだよ。」

「でも・・・駄目なのぅ・・・」

「そのまま我慢してろ。」

「だって、手が・・・・」

「すぐに終わる。」

廊下の悟空はいつの間にか背後に八戒が来ているにのに気がついた。

「あの2人は中で何しているんでしょうね。」

そうつぶやいて悟空をドアの横に押しのけた八戒の顔を見て、

悟空は雪原のブリザードのごとき寒さを背中に感じた。

ガチャ

ドアをいきなり開けた2人が見たものは、

額をつき合わせて缶詰を開けようとしていると三蔵だった。

「あっ、悟空よかった、凄く良いタイミングだね。。

今ね 牛肉の大和煮の缶詰が開いたよ!」

そう言ってはニコニコと悟空に缶詰を差し出した。





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Scene 2


、後向け。」

「私、このままでいいよ。」

「俺は後からの方が やり易いんだ。」

「もうすぐ八戒が来るから 八戒にお願いするもん。」

「却下。」

「そんな事言って 出来るの?」

「てめぇ、煽っていやがるのか?」

「そんなこと・・・だって・・・・じゃあ優しくしてよ。」

「俺を誰だと思っていやがる。」

・・・・・・・・・沈黙。

「あっ、ホント・・・・三蔵ったらお坊さんなのにすごい上手・・・気持ちいィ。」

とろける様なの声に、八戒は思わずノックを忘れてドアを開けた。

そこには 櫛を片手にの髪を梳いている三蔵と、

後ろ向きで大人しく座っているが・・・・。

2人は八戒のただならぬ様子に驚いてこちらを見ていた。

「三蔵ありがと、八戒が来たからもういい。

ねぇ八戒、三蔵がねみつあみしてくれるって言うんだけど、

いつもみたいに八戒がしてくれる?」

「えぇ、もちろんです。」

は、三蔵から櫛を取り上げて八戒にそれを渡して、にっこり笑った。

嫌な場面を見られたと思って眉間にしわを寄せているいる三蔵と、

からご指名で頼まれて得意げな八戒。

と三蔵と八戒の複雑なみつあみは、そうして今夜も編まれていく。





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Scene 3


「なぁ、これ いい匂いだろ?」

「クンクン・・・・うん、あっ苺の匂いだね。ちゃんと色もついてるんだ。」

「さっきさ、悟浄がくれたんだ。お前も持っておけって・・・」

「でも これって持っててなんに使うの?
悟空にくれたって事は、悟浄もポケットにいつも持っているのかな?」

「お姉さんと良い事する前使うンだってさ。」

「良い事ってなんだろ? だってこれ・・・・」

「うん俺もそう思ったけど、お姉さんたちって こういうのが好きらしいんだ。
もこういうの好きか?」

「ん〜、どうかな・・・・問題は匂いじゃなくて 味だと思うんだけど・・・・。」

『悟浄がくれたお姉さんたちが好きなもの』という言葉に、

八戒の教育的指導魂が反応をした。

可愛いと年の割りに子供な悟空の2人に、

あの歩く有害指定物は何を与えたのだろう。

想像をするだけで心配になった八戒は、部屋に入って2人の手元を見る。

「ねぇ、八戒も苺のガム食べる?」と、が尋ねて

「悟浄がくれたんだ。」と悟空は嬉しそうに説明をしてくれた。

可愛い2人はフレーバーガムに夢中の様子だ。

まったく人騒がせな・・・・やっぱり後で指導が必要だと八戒が思ったのは言うまでもない。





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Scene 4


「ねぇ三蔵、自分じゃ上手に出来ないから三蔵がやって・・・お願い。」

「まったく、・・・・」

「え〜ダメなの? じゃあ、悟浄か八戒に・・・・・」

「却下。」

「三蔵、丁寧にしてくれるから 気持ち良いんだもん。」

「俺にこんな事させるな。」

「えぇ〜、三蔵だけにさせたい私の気持ち分んないのっ?」

「はぁ〜、仕方ねぇな。こっち来い。」

「うん、三蔵大好き。」

ベッドの上を移動しているらしい布ずれの音ととスプリングがきしむ音が聞こえてきた。

三蔵って丁寧で 気持ちよくしてくれるのか?

悟浄は部屋の中の会話に想像を膨らませながら、ドアを開けた。

今入ったら間違いなく的にされて命が危ない事は分っている。

それでも ひとめ中の様子を見ずにはいられない悟浄だった。

パチン、パチン

そこには三蔵がの右手の爪を切る姿。

思いっきり不機嫌そうにしながらも の爪を最後まで整える三蔵だった。



後で悟浄が標的にされたのは言うまでもない。





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Scene 5


、もう少し力を抜いて下さい。」

「でも・・・くすぐったいよ。」

「大丈夫です、すぐに良くなりますからね。

此処は体の神経が集まっていますから こうすると・・・」

「うっ・・・・」

「ほら、いいでしょう? は此処が弱いんですね。

じゃ、重点的にしてあげますよ。」

「あン・・・・・・。」

「最初は痛かったでしょうが、段々良くなってきたんじゃないですか?
さあ 僕に任せて素直にの良いところを触らせて下さい。
それから こっちも忘れないように・・・ね。」

ベッドがギシッと鳴ったのを聞いて、三蔵は思わずつばを飲み込んだ。

新聞の影から覗くその光景は、見なければ身体に・・・

特に下半身に悪い会話に聞こえる。



「はい、終わりました。」と 八戒がの足裏マッサージを終えベッドから立ち上がると、

三蔵は肩に入っていた力をようやく抜いて 煙草に手を伸ばす。

「三蔵、いけない事考えちゃ駄目ですよ。
の全ては僕のものですからね。」

そう言うと八戒は三蔵ににっこりと笑顔を向けた。





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Scene 6


「ほら、口を開けろ。」

「いやっ」

「何でだ?はこれが好きだっただろ?」

「どうしてそんな事言うの・・・・三蔵の意地悪ぅ・・・・」

「いいからさっさと口を開けろ、特別に俺のを食わせてやる。」

「でも・・・・」

「なんだ気にいらねぇのか?」

「ううん、そんな事無いよ、でも・・・・さっきも食べたから・・・・・
あごが疲れちゃってて・・・今はいい。」

「誰のだ?」

「へ?」

「誰のを食べたと聞いている。」

「ん? えっと八戒の・・・・・大きかったの。」

俺に内緒で八戒と三蔵はに 食わせているのか?

おいおい、それはずりぃじゃん。

そう悟浄がドアの隙間から中を覗くと、

三蔵が夕食に出た林檎をの前に差し出していた。

「俺は ガキじゃねぇっつうの!
こんなんばっかじゃねぇか・・・・・」

廊下の悟浄はそう言って 肩を落とした。





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Scene 7


「いいか、ゆっくり入れるからな。
は出来るだけ力を抜いてろ。
此処までこすっておけば もう痛くは無いだろ。」

「・・・・・・うっ。」

「やっぱり きつすぎるか?
仕方ねぇ、もう少し慣らすか。」

「ううん、だ・・・大丈夫。」

「このまま慣れるまでは動かさないから。
痛みと痺れが引いたら 言え。」

「うん、分った。
ごめんね三蔵、その状態は辛いよね。
三蔵法師様にこんな事させるなんて 佛罰が当たるかも・・・・。」

「バカ、そんな事気にするな。」

「あっ、少し大丈夫みたいだから・・・・動かしてみて。」

「ん そうか、じゃ動かすぞ。」

「三蔵、やっぱ・・・んんっ・・・・あっ・・・・」

三蔵、宿について早々ですか?

しかも 夕方で薄暗いとは言え 電気を点けてじゃが恥しいじゃないんですか?

今 僕がこのドアを開けたら 可哀想なのはですかねぇ。

そんな事を考えていた八戒に部屋の中から声がかかった。

「八戒、廊下に居るんだろ。
入ってきて俺と代われ。」

そう声を掛けられて八戒はドアを開けた。

そこには ジープの上で冷えた足をお湯で温めると、

湯桶の中に手を入れての足を持っている三蔵の姿。

その様子に笑顔を向けて いそいそと交代する八戒だった。




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「リレー日記」のメンバーにお誘い頂いて 
そこでの当番日に書き込んでいた超短編です。
あちらでは今までに6作品を公開。
メンバー様のお名前を借りて1作づつ書かせて頂きました。
今回 少し手直しをして 自分用も追加した7作品をUPさせて頂きます。
この題を使ったのは邪道ですが、何でも在りのショッピングモールなイメージからです。

メンバー6名様に限りクリスマスプレゼントとしてお持ち帰り可とさせて頂きます。