NO.81 ハイヒール





2人で住んでいたころは出かけなくてもいつも2人でいたために感じなかったが、

お玉たちと共に住むようになって見ると 2人でいたことが

なんだか とても貴重な時間のように感じた八戒は、

を時々 外へと連れて出るようになった。

食事や家事の心配をしなくてもよくなったことで お稽古事に精を出している

外で待ち合わせて 映画を見たり コンサートへ行ったりと

何処にでもいる恋人のようなデートをする。

八戒ももちろん楽しかったが は それを非常に喜んでくれたので

八戒自身も楽しみにしていた。







今日のお出掛けは 有楽町近辺。

映画と食事の帰り道。

ポケットから出した小物に 着いて出て落としたハンカチを 拾ってかがんだ八戒に

の細い足首が 目に止まった。

お玉の小言で 可愛いけれど美しく着飾る事を覚えた

八戒をさらにとりこにしたのだが、今 目の前にしている のくるぶしには

痛々しく 血のにじんだ 靴連れの跡。

痛いのだろうに そんな事はひと言も言わないに 八戒は不意に憤りを覚えた。








拾ったハンカチを ポケットに押し込むと の右手を掴んで 急いで歩き出す。

なんだか 急に態度の変わった八戒に その愛くるしい瞳を 白黒させながら

さっきから痛いのを我慢している足の事を言い出せず は 着いていく。

「八戒さん ちょ・・・ちょっと 待って下さい。

もう少し ゆっくりと歩いてくれませんか?

どうしたんですか?

ねぇ 八戒さん?」

引きずられるように歩く 可愛いに まだ 早い時間の街頭にいる人たちは

好奇の目を向ける。








目についたコンビニに入ると 男性用と女性用の下着 バンドエイド 

ストッキング 避妊具を籠に放り込み レジで精算を済ます。

その間の八戒は 無言。

そして いつもの笑顔も無い。

店を出ると タクシーを捕まえて 乗り込んだ。 

「赤坂 プリンスホテルへ。」

ここからさほど遠くない 赤坂の高級ホテルの名を 八戒が口にする。

運転手へと指示を出すと を見ないで 真っすぐに前を見ている。

ホテルのフロントでも 終始無言で 手続きを済ませ カードキーを受け取ると

の手を引いて エレベーターに乗り込んだ。

は 展開についていけないままに 黙って八戒にしたがっている。








部屋に入った。

不意に 八戒は を横抱きに抱えあげると ゆっくりと ベッドに降ろした。

そのの上に 八戒が 覆うようにかぶさる。

、僕は怒っているんですよ。

何に 怒っているのか分かりますか?」

鼻と鼻が 触れ合うくらいの位置に 八戒の顔がある。

「いいえ、ごめんなさい。

私 そんなに怒っちゃうほど 酷いことしたんですか?」

訳が分からないは 恐る恐る尋ねた。

「そうですか・・・・・わかりませんか・・・・・・じゃ、これならどうです?」

八戒は不意に の靴づれのある足首を ぐっと掴んだ。

「あっ、・・・・・・いっ・・痛い。」

「これですよ、僕が怒ったわけは・・・・・。

どうして言ってくれなかったんですか?

こんなに酷いんじゃ 歩くの辛かったでしょう。」








今度は ゆっくりと優しい手つきで ハイヒールをそっと脱がす。

「あぁ 思ったよりも酷いですね。

傷口を洗わないと 絆創膏も貼れませんよ。」

もう片方のヒールも脱がすと 両足に手を置くと 上に滑らせた。

「なっ・・・何するの?」

すでに全てを見られている間柄だと言っても いつもと違う態度の八戒の行動に

は戸惑った。

「ストッキングを脱がそうと思いまして、皮が剥けてて 血が出ていますから 水で洗わないと

いけないですよ。それに ストッキングも 血で汚れています。」

当然といった態度の八戒。

「それなら 自分でやりますから 八戒さんは・・・・・。」と 八戒を見たは 

それ以上の言葉をのどの奥に飲み込まざるを得なかった。








八戒は 怖いほどの微笑を浮かべて の手を 掴んでいた。

、僕 怒っているって言いませんでしたか?

この靴づれは僕が治療します。」

そう強く言い切られてしまったは それ以上八戒に何か言う事は出来なかった。

浴室で 脚を洗うついでと言って 八戒に身体を洗われることになったが

コンビニでの買い物リストを 思い浮かべ あきらめなければならない だった。







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