NO.35 髪の長い女
くっそぅ〜、すげぇ好みだ。
今 俺の斜め前に座った女。
座るときに チラッとしか見えなかったけれど それでも 充分に整った
サングラスの隙間から見えた 美しい顔。
ハイヒールを履いた脚を 組んで座っているから
きれいな膝下のラインが 俺を悩殺する。
それに ふくらはぎから 足首にかけて すげぇ〜かっこいい。
あの足首を ベッドの上で 握ってみてぇ。
小物の趣味も悪くねぇ。
ブラウスのボタンを3つ目まで外した Vゾーンから見える 鎖骨の辺りには
華奢な白金の鎖が 鎖骨に沿って そのラインをゆがめながら 肌を彩っている。
あの肌に 紅い跡を残してみてぇと 理性の枠を超えたところで
自分がうずくのを 確認してしまう。
男って つくづく 難儀な生き物だゎ。
雑誌をめくる その手元は きれいに塗られている。
どの指にも リングは見当たらない。
フリーなのか?
これほどいい女が?
あの手で 俺の背中にしがみ付かせてみてぇな・・・と思った。
どんな声で 鳴くんだろう・・・
美白が言われて久しいが 化粧が必要なほどには見えない 滑らかそうな白い肌。
唇にのせた色は 俺の色。
グロスで仕上げてあるのか 艶を放って 濡れているように見える。
味はどうだろうか?
見かけどおりに 熟れて 甘いのだろうか?
大人な外見どおりに 少し苦みが 混じっているかもしれない。
ただ 惜しいのは そのヘアースタイルだなぁ。
せっかくここまでいい女なのに 決まってねぇ。
髪が長いのは それはそれでいい。
でも 顔を隠すように 長いだけなのは 俺としちゃ いただけねぇな。
俺が彼氏なら あんな髪形はやめさせるな。
もっと 顔を見せるようにさせるんだけどな・・・・と 似合いそうな髪形を考えた。
それを その斜め向かいの女に かつらのようにかぶせてみる。
なんだか その女が に見えてきた。
おいおい、いくらなんでも ここまで行くと 病気だぞ!と
俺は焦りを感じた。
俺の彼女、は 俺がどんなに頼んでも こんな格好はしねぇだろう。
あいつには 可愛いという形容詞が 一番似合っているはずなのに
だからこそ 手も出さずに 大事にしてんのによぉ。
壊さねぇように 傷つけねぇように 無理やり大人にしねぇように・・・・。
あぁ〜俺の頭 湧いちゃってんのか?
そんな俺の視線に 気が付いたのか そのいい女は 顔を上げてこっちを見た。
ん〜、顎のラインも申し分ねぇなぁ。
ルージュをのせた唇が 俺に向かって 音なしで囁いた。
『悟浄、私も充分に大人なのよ。』
えっ! ええっ?
『いつまでも 子ども扱いは イヤ!』
マジで?
『いい女になるから・・・・』
ゆっくりと サングラスを外すと 見知った顔の女が現れた。
きれいに化粧を施した 大人の女の微笑で 俺は瞬殺された。
やられた・・・・。
椅子から立ち上がり の目の前に立つと 手を差し出す。
「マジ、惚れ直したわ。
俺の可愛い子から 俺のいい女になってくれんの?」
ニッコリ微笑んで が俺の手を取り立ち上がると 突き刺さる男の視線が痛いねぇ。
だけど まあ いい気分だわ・・・・・なぁ。
そのまま 2人して腕を絡ませて歩き出す。
俺は思い出したように の耳元に囁いた。
「すげぇ いい女になったけどよぉ、
髪形だけは それ似合わねぇな。
長い髪が イコール 大人のいい女ってことじゃ ねぇじゃん?」
俺の言葉に は うれしそうに微笑んだ。
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