NO.32 鍵穴
珍しく 所長室から出てきて ソファで雑誌をめくっていた 菩薩が
報告書や PCに向かっている職員5人に 呼びかけた。
「おい、てめぇら これから俺が聞くことに答えろ。」
この人に 何を言っても 結局は思いどおりにされる事を知っているので
今更 抵抗しようとするものは ここにはいない。
三蔵でさえが 渋々という感じで 顔を上げて 質問を待っている。
その様子を満足げに見た菩薩は 「よしっ。」と 頷いた。
「『貴方は金庫破りです。目の前に大きな金庫があります。
この金庫の鍵を、貴方はどのくらいの時間であけられますか?
頭に浮かんだ数字を答えて下さい。』
どうだ てめぇらなら どの位で開ける?
探偵としてではなく 男としてだ?」
なんだか訳が分からない内容の質問に 一同は 首をかしげて
質問が問うている裏を考えようとしている。
「俺は 15分だな。だって 俺起用じゃん。」と 悟浄。
「えぇ〜、悟浄が15分なら 俺はもう少しかかるなぁ。25分くらいかな?」と 悟空。
「僕は そういうの得意なんですけど ここはあえて 45分と答えておきます。」
「八戒は そんなにかからねぇんじゃねぇの?
俺でさえ 25分だぜ。なぁ 悟浄?」
悟空は 八戒の答えに 思いっきり不信感を持った様子だ。
「三蔵は?」菩薩は 答えを言おうとしない 三蔵を促した。
「ん?俺は・・・・・・・・八戒ぐらいは大丈夫だろう。
金庫の鍵穴次第では +15分大丈夫な自信があるが
最低45分・・・そんなもんだな。」
書き込んだ書類を 点検しながら 三蔵は菩薩が何を聞いたのかを
理解している口ぶりで 答えた。
「三蔵、何の時間か分かって言ってるのか?」
悟空の驚いた声を 三蔵は フンと笑って流した。
「は どう思う?」
菩薩は にも尋ねた。
「えっ、私?
そんなこと したこと無いから 分からない。
教えてもらえば やれると思うし 出来ると思うけど・・・・1人じゃ無理だしなぁ。
未体験に付き 未知数と言うことで・・・・・。」
が答えると 菩薩は楽しそうに 肩を震わせて くくっくっ・・・・と笑った。
「、てめぇの答え 最高だな。
もの凄く 的を得ている答えだったぞ。」
質問の意図がはっきり分からないが 自分の状況をうまく説明できたと
はほっとした。
「なぁ 所長、何に答えたのか 早く教えてくれよ。」
悟空が痺れを切らせて 質問の意図をせっついた。
「よし、教えてやるか。
『このテストで分かるのは貴方の耐久時間です。』」
そう菩薩が言った途端
「しまったぁ〜。」と 悟浄が叫んだ。
そして 八戒は あからさまに笑い出し、三蔵も書類の影で 肩を震わせている。
訳が分からない 悟空とは その様子を ぽかんと見ていた。
「八戒、何の耐久時間なんだ?
悟浄が 15分で『しまったぁ〜。』って言うほどのものなのか?」
悟空の直球な質問に 菩薩が答えた。
「悟空、読むから聞け。
『金庫を開ける為に必要な鍵、それは貴方自身を意味し、鍵穴は相手。
即ち恋人との行為で貴方がどれだけ耐久出来るかが、この心理テストで分かります。
答えた時間はそのまま耐久の時間とお考え下さい』ってこった。」
菩薩が読んだ その内容を理解した 悟空とは途端に 顔を真っ赤にして俯いた。
「男が 女の中に入ってから イクまでにどの位かかるかって事だよ。
悟浄は ナンパ師の癖に 短けぇなぁ。
それで 1人の女が留まってくれねぇのか?」
菩薩は 悟浄をからかった。
「悟浄 そうだったんですか?
同じ男として ご同情申し上げます。」八戒は楽しそうに 悟浄に会釈をした。
「くっそぅ〜、三蔵も八戒も知っていて あの答えだったんだな。
今のは 無実だからな。
俺は 女を喜ばせる事にかけちゃ 三蔵や八戒には ぜってぇ負けねぇ自信がある。」
悟浄は に そう弁解をした。
「てめぇは 早撃ちだから 指テクで誤魔化してんのか?」
菩薩は 悟浄に更に追い討ちをかけた。
「悟浄、は『未体験に付き 未知数。』だそうですから 弁解しても無駄ですよ。
でも の答えは 本当に的を得ていますね。
、初体験の時には よろしければ 僕が ご教授させていただきますよ。
1人じゃ 無理ですからね。」
八戒は の手を取って その甲に キスを落とした。
「八戒、開けるのに 必要な鍵は その鍵穴にあったもの1つでいい。
幾つもいらねぇんだよ。」
三蔵が 静かに だが 確信的な思いの一言を言う。
「おや 三蔵ものお相手に立候補するんですか?
どちらの鍵が の扉を開けるに至るか 楽しみですねぇ。」
八戒の言葉に 三蔵が書類から顔を上げた。
「 選り取りみどりで もててるねぇ。
さすが 俺の血筋だよなぁ。
八戒も三蔵も 女は ばっかりじゃねぇんだ。
ちったぁ 気ぃ使えや。」
菩薩の言葉に「俺 所長が相手なら 無限大で 大丈夫。」と悟浄が漏らした。
パコ〜ン!
悟浄の頭を 雑誌を丸めたもので 菩薩が思いっきり叩いた音が オフィスに響いた。
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