NO.03 荒野





蔵書の中から 目的の1冊を取り出して は読み始めた。

海外少女児童文学の大家である バーネットの「Secret Garden」。

今までに 何度も読んだことがある1冊だ。

バーネットの作品は の子供の頃 夢を託した作品だといっても 過言ではない。

「小公女」も「小公子」も 不遇に陥った主人公が 苦労の末に幸せになるお話で

現実逃避したい気持ちの表れなのか それとも

そこに救われる思いがしたのか 何度も紐解いたおぼえがある。





だが「Secret Garden」は それらの作品と趣が違う。

まず 主人公メアリーは 最初から良い子ではない。

そして どん底の不幸でもないくせに 不満ばかりを言って 可愛くもない。

だが 彼女には 強さがある。

そこがは好きだった。

従兄弟のコリンとディコンと花園を巻き込んで 自らの手でそれを変えていく。

幸せは 棚ぼた式で手に入るものでもなく 人に与えられるものでもなく

自分でつかみに行くという姿勢が メアリーに共感できる所だった。






メアリーが 伯爵家に引き取られてくる冒頭シーンが のお気に入りだった。

雨の降る暗い陰気な荒野を 馬車でメアリーが行くのだったが

それは彼女の心をも うつしているようで 象徴的な場面だ。

そこから 全てが始まって行くのだ。

メアリーの心の動きや花園の再生度と共に 荒野の描写も綺麗で 

明るい 鮮やかなものへと変わってゆく。  

最初から 綺麗で 明るくて 居心地の良い場所なんかない。







「八戒と共に」 そう心に決めて 彼のプロポーズを受け入れた。

メアリーが向かった 荒野ほど酷い始まりでないのは

八戒のに対する愛ゆえかもしれない。

それでも 何もしないまま 八戒の愛に甘えていては

幸せを手にすることができないことは にも分かっている。

花園に 手を入れていくのは 他でもない自身の仕事なのだ。





雑草を抜き 土を耕し 種をまき 球根を植え 水を与え 

時には いらない枝を払わねばならないだろう。

愛と家庭を守るためには 時として 非情にならなければ ならないかもしれない。

だが それを怠れば ばかりか 八戒をも不幸にする可能性がある。

「Secret Garden」には 続きは書いてないけれど

メアリーだって その後はもっと 努力したはずだ。

みんなの幸せのために・・・・

自分の幸せのために・・・・・






表紙を閉じて は思う。



私は 今 花園の鍵を手にしたばかりなのだと・・・・








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