NO.17 √





景吾が大学を出て父親の会社に就職して暫くした頃の話。




景吾の眼を惹きつけてやまない女がいた。

この就職難に 短大を出たのにまともに就職できなかったとかで、

母親の知り合いである跡部家のメイドの空きに就職したと言う、

お袋に新しいメイドだと紹介されたのが、景吾のの見始めだった。

俗に言うお嬢さんの行儀見習いのようなものだ。

景吾のメイドは入れ替わりが激しい。

それは彼の性格にもよるが、景吾曰く「ろくな女がつかねぇ。」ことが原因だった。

それは素直に見合いをしない景吾のために考えた、母親の苦肉の策だということに

景吾は薄々気付いていて 余計にメイドに厳しく当たることも原因だった。

「親父やお袋付きに比べると、俺は厳しいぜ。」そう 意地悪い事を言ってみる。

「至りませんが、よろしくお願い致します。」

そう頭を下げたを上から下までじっくりと眺めて 

景吾は母親に頷いて了承の意を伝えた。



学生時代も忙しいと感じてはいたが、会社勤めをしだしたらテニスをする暇も

なかなか取れないほど忙しい。

会社では いつも大勢に囲まれて、大切に扱われてご機嫌伺いされて・・・・

そんな扱いにも疲れる。

今までも常にそうだったが、こと テニスに関しては そんな事がなかったのだと、

改めて思い知ることになった。

ライバルは景吾の地位や家柄や容姿には関係なく 力でぶつかって来たし、

景吾より強い奴には当然のように負けることもあった。

部の仲間は、その実力で彼を慕い 尊敬してくれていた。

外側の飾りではない自分の本質を見てくれる相手と言うのは気持ちがいい。




だが、こと 女のことに関しては、景吾は既にあきらめているような節があった。

打算的で 計算高い女と言う生き物は、常に景吾の外側にばかり注目してくれる。

テニスがうまいこともその要素の1つにしかならず 決して景吾自身を見ようとはしない。

学生時代を含めて 本気で好きになった女など居なかった。

だからこそ の存在は景吾にとって特別だった。





「景吾様、朝です。」

彼女はそう言って カーテンを開け部屋に陽の光を入れる。

「もう少し寝かせろ。」

それに背を向けて 景吾は不機嫌そうにつぶやいた。

「お正月休みだからって、寝坊はいけません。

それに、みんな帰省で帰っていないんですし、旦那さまも奥様も海外にお出掛けです。

景吾様がここに残ると仰ったので、私も残ることになったと言うのに

そんな勝手は許しませんよ。

どうして ご一緒なさらなかったんです?」

は景吾のことなど関係ないように その背中に話し続けている。

と一緒にいられるからだ。)と、景吾は内心でつぶやいた。

「おかげで 私はみんなとずれてお休みです。

まあ 特別手当を期待していますけどね。」

そう言っては景吾の部屋を後にした。



もし、が自分に想われていると知ったら、きっと自分の担当を外して欲しいと願い出るだろう

景吾はそれが予想出来るため、手も出せず告白も出来ずにいた。

同じ家にいても自分付き以外のメイドには、10日ほど会わない事などざらにある。

それだけは避けたかった。

最悪 ここを辞める可能性もある。

帰宅して一番に迎えてくれる優しい「お帰りなさいませ。」と言う言葉。

使用人だというのにまるで家族のように話しかけてくる その親しさ。

無理を言っても渋々と言った言葉だが、決して断ったり否定したりしない。

その彼女の存在に どれほど癒されているかと思うと、

もう少し自分を知るようになってから我慢をしてきた景吾である。

さえ頷いてくれれば 今すぐにでもあの腕を引っ張って、このベッドに沈めたい。

そんな考えに大きく息を吐くと、の機嫌を損ねないうちにベッドを離れた。




今回の海外行きにだって 最初は両親に同行するはずだった。

ただ 忙しさのため返事が遅くなっただけのはずだったが、

意を伝えようとした時には既に景吾は留守番とされていた。

しかも 1人じゃ不便だろうと言うので、母親がメイドを1人残してくれると言う。

後は全員お正月休みを与えると言うことだった。

他の者だったら断るか ホテルにでも行こうと思っただろう。

だが 世話をしてくれるのがと知って、その考えはあっさりと捨てた。

その話をした時の両親の自分に対する目配せと父親の「しっかりな。」と言う言葉の意味。

自分の気持ちは知られているんだということが、景吾には面白くなくて

「言われるまでもねぇ。」と 虚勢を張って答えておいた。

普段息子には無関心なくせに、ああいうことだけは妙に勘が良い2人だ。

きっと 手も出していないことはバレバレなんだろうと思うと、

自然に不機嫌そうな表情になった。




階下へ降りて行き準備してあったブランチを食べ終えて廊下に出ると、

浴室からの鼻歌が聞こえてきた。

(まったく人に気も知らないで・・・・)景吾はそう内心で愚痴ると、楽しげなハミングに誘われて

浴室を覗いて見た。

腕まくりをしスカートを心持ちたくし上げて床掃除をしているは、

景吾がそれを見ていることなど気付かない。

相変わらず背中を向けてしゃがんでいる。

その後姿にふと景吾に悪戯心がわきあがった。

音のしないように動いて 浴室の操作パネルに手を伸ばすと、

38度くらいに湯温度を設定して シャワーを出すボタンを押した。

「キャー、何なにィ〜。」

当然、シャワーの下に居たにお湯が雨のように降り注ぐ。

背中から浴びた湯を止めようとして、前を向いたの全身が濡れることになった。




パネルに手を伸ばそうとしたが、そこに景吾の姿を見て

思わずそのまま固まった。

「景吾様、どうして?」

景吾も悪戯心からとは言えちょっとやりすぎたかなと思ったが、

こちらを見たの姿を見て 同様に固まった。

メイド用の黒い制服は 薄手のジャージ素材で透けることはないが、

その代わりにの身体にぴったりと張り付いていた。

下着の線とボディラインがあらわになり、胸の隆起が強調されている。

湯に刺激されたのかその頂がプクンと尖って、ブラジャーをしているにもかかわらず

その存在を示していた。

その景吾の視線を自分の目で追ったは、それに気付くと恥しさのあまり

湯を止めることも忘れて その場にしゃがみこんだ。

膝をゴンと撃った音がしたが それは気に留めずに

「け・・・景吾様、お湯を止めてください。」下を向いたままは景吾に頼んだ。



その段になってようやく景吾は 我に返ってお湯を止めるボタンを押した。

ようやく止まったお湯にが顔を上げた。

「景吾様、バスタオルをお願いできますか?

なんだか誤作動を起こしたらしくて お湯が出てきて濡れてしまったんです。」

はそう言って泣きそうな顔をした。

景吾がやった悪戯だとは気付いていないらしい。

わずかな罪悪感を覚えた景吾は、大人しくバスタオルを渡してやった。

だが、びしょ濡れのはこのままでは風邪を引く。

、お前このまま湯を入れて風呂に入れ。

風邪を引くぞ。」

そう言うと は首を横に振った。

「いえ、いいです。」

「なんでだ?」

「・・・・・着替えがないですから。」

は訳を言うと耳まで赤くして俯いた。

「あっ・・そうか。

だったら俺のバスローブを使え。」

棚から自分用のローブを出し見えるところに置くと、パネルを操作して湯船に湯をはる。

「いいな、ちゃんと暖まるんだぞ。」

景吾はそう言い残して 浴室とつながっている脱衣所を出てドアを閉めた。



暫くして 浴室の扉が開閉する音が聞こえた。

景吾は廊下でが出てくるのを待った。

脱衣所のドアがそっと開いて バスローブに包まったが廊下に足音を忍ばせて出てきた。

。」

景吾の一言には身体をビクッと震わせると、声のした方へと顔を向けた。

「何処へ行くつもりだ?」

「はい、自室へ下がらせて頂いて着替えて・・・・」

言い終わらないうちに景吾はの腕を掴むとリビングへと引っ張って行き、ソファに座らせた。

「景吾様?」

「ここに居ろ。

今暖かいものを出してやる。」

景吾はそう言うとキッチンへ行き準備しておいた紅茶を持ってきて、

の前に座りカップを差し出した。

「飲め。」

有無を言わせぬその口調に、はカップに口をつけて黙って飲んだ。

紅茶にはブランデーが落としてあり、を身体の芯から温めた。



貸したバスローブはいつも自分が使っているものだからには大きいのは当たり前だ。

着丈も袖丈も長く 身幅も余っている。

その中には一糸まとわぬの身体があると思うと、

景吾は自分の中が熱くなるのを感じた。

、さっき膝をぶつけただろう 見せてみろ。」

景吾はそう言って からカップを取り上げ前にしゃがみこんだ。

「あ・・・あの もう大丈夫ですから・・・」

バスローブの裾に掛けた景吾の手を押さえた。

「俺が大丈夫じゃねぇんだよ。」

押さえられた手を振り解いて 膝を出すように裾を開くと、

はあわててそれ以上広がらないように膝上を両手で押さえた。

少し赤くなったそこへ指を滑らせると「大丈夫そうだな。」と景吾は言った。

は俺のメイドになったのが何でか知っているか?」

膝から手を離さずに景吾はに話しかけた。

「いいえ、母と奥様の間でここへの就職が決まりましたから、その他は何も・・・」

は困ったように首を横に振った。

「そうか知らないのか、俺付きになるメイドは俗に言う『見合い相手』なんだ。

お袋の奴、俺が絶対見合いを受けねぇもんだから 

自分が薦める女をとにかく俺に付けてみるんだ。

掛け合わせているつもりらしいが、それでも俺に選択権があるだけましだ。。

今までのは短い奴は1週間、長い奴で1ヶ月くらいだったか・・・・まあ、そんなもんだ。

はもう8ヶ月だろう。

俺のことは充分見て知ったよな?」

そう尋ねた景吾に、は頷いて同意した。



「嫌なら拒めよ。

ここで拒めば は俺から自由になれる。」

膝に置かれていた景吾の手が 太ももの外側をゆっくり上に向かって上っていく。

「俺が嫌いか?」

「き・・嫌いじゃありません・・・でもっ・・・」

ゾクリとした感覚に は言葉を詰まらせる。

「こういうことは初めてなのか?」それに小さく頷く。

景吾の手は臀部までたどり着いていた。

ローブが広がらないようにが押さえているので、見えてはいないが肌はすべらかで

シルクのような肌触りを、景吾に与えてくる。

は嫌かもしれないが、俺は・・・ずっと見てきたんだ。

親父の『しっかりな。』と言うGOサインも出たからな。

遊びじゃねぇ 本気だ。」

景吾はそう言って頬の赤いに口付けた。

初めてのは景吾のキスだけでも翻弄される。

「親父もそうやってお袋を選んだらしいぞ。

俺にもを選ばせてくれ。」

景吾はそう言ってバスローブの紐を解くと を手に入れた。






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「Moment」エニィ様へ
当サイト1周年記念には、素敵なイラストのお祝いを賜りありがとうございました。
リクを頂いておきながら、UPが大変遅くなり申し訳ありません。
ささやかな返礼としてお受け取り頂ければ幸いです。
現在は閲覧のみの「テニプリ夢」ですが、「Moment」様がテニプリサイトのため
特例として景吾ドリを書かせて頂きました。

エニィ様に限り お持ち帰り可とさせて頂きます。