『こんな私だけど、よろしくお願いします。』
はあの日、そう言って僕の告白を受け入れてくれた。

あれは、忘れもしない4月1日。
いわゆるエイプリルフールと言う日だった。
何故その日に告白したのかと言えば、僕にはちっとも勝算がなかったわけで、あったのは彼女が大好きだと言う気持ちだけ。

だから、もしが『悠斗さんったら、冗談が過ぎますよ。』
(彼女は付き合う前は僕のこと『悠斗さん』と呼んでいた。
今でも怒ると他人行儀に『悠斗さん』と呼ぶ。
そんな時僕は非常に凹んでしまう。)
とでも言われたら、『ちゃん、今日は4月1日だよ。』と言って逃げるつもりでいたのだ。
男なんてその程度の度胸しか持ち合わせていない。

だけど、バイト仲間では凄く好かれていて、僕じゃなくてもきっとその内に誰かが彼女に告白するだろうと思ったから。
そしたら、その男とデートしたり、手をつないだり、キスしたり、それ以上のことだってしたりするわけで、
そんな想像してみたら、とても僕には耐えられそうもなかった。
を他の誰かに渡したくない・・・ってさ。
そこまでは早かったんだ。

だけどさ、いざとなったら全然進まない。
『おい、悠斗。
いつまでこのままでいるつもりだよ。』と、セルフ突っ込みしてみる。
面倒を見ている学習塾の子供たちの受験が終わるまで・・・とか、合格発表が終わるまで・・・とか、卒業するまでとか、段々延びていってとうとう春休み。

壁にかけてある2か月分表示のカレンダーを見上げて、目に付いたのが4月1日。

ちゃん、話しあるんだけど出てこれる?」
バイトが休みの日に、彼女を呼び出した。
今から思うと、なかなか話が切り出せなくて、どうでもいい話を延々してた。
それでもは楽しそうにニコニコして聞いてくれて、僕はやっぱり彼女をあきらめることは出来ないと、再認識したと言う訳で。

ちゃんが好きなんだ、だから僕と付き合って欲しい。」
話の隙間にそっと囁いて、後は彼女の反応待ち。
駄目だったらエイプリルフールのせいにしようと決めてた。
あまり上手くいった方のことは考えていなかった。
だってさ、期待するだけして駄目だった時、ダメージ大きいから。

でもの口からこぼれてきた返事は、
「こんな私だけど、よろしくお願いします。」だった。

もちろん今でも あの感激を忘れちゃいない。
時々、そう時々と喧嘩をした時は、あのときのことを思い出して、今の幸せに思いをはせる。
喧嘩できるほど、僕に気を許してくれてるんだ・・・って。
そして、と一緒にいられなくなることを考えて、このままでは駄目な気持ちになるんだ。
僕に謝るべき所はなかったのか考えて、仲直りの糸口を探すことにしている。

本当はあの時、僕もにこう言うべきだったんだ。

『こんな僕だけど、よろしくお願いします。』って。






(C)Copyright toko. All rights reserved.
2004.12.22up