ベビーカステラ 3
ベッド横のサイドテーブルにある光源をわずかに光っている程度まで更に落とす。
明るい所からこの部屋に入ったら、闇に近い。
それでもその光に目が慣れてしまえば、結構見えてくるものだ。
人の機能は順応性がある。
料理を味わう時には、先ず目で堪能してから箸を付けるのが順序だ。
本当のところは、を味わうのにもそうしたい。
俺との関係に慣れ、肌だけでなく心だけでなく、その存在の全てを許すようになれば、それも可能なのだろうが、バージンの彼女にそんな事は望めないだろう。
その位は心得ているつもりだ。
それこそ、水着姿なんかは何度も見ているから、ボディラインも胸の大きさや形も見て知っている。
知らないところはほんの一部分に過ぎない。
それも、女性を知っていればそんなに違いのないことも知っているし、ベッドの上ではそんな事が重要でない事は、言わずもがなだ。
だけれども、それを口にすればデリカシーのない人になってしまう。
会社ならセクシャルハラスメントだと言われかねない。
だから、先ずは手探りで。
バスローブのサッシュをほどくと、はだけないようにしながらも隙間から手を入れてみた。
あまりそちらへ意識が行かないように、キスでの熱を上げながら。
肌に触れた途端に、ビクッと身体全体が反応を返す。
誰も踏みこんだ事のない領域へ入る初めての冒険者の気分だ。
それも、この未開地への憧れは、誰よりも強かった。
一番になれたことの喜び。
そして、そうなったからこそ、踏み込むのに勇気がいる。
自分の手で守り、育て、愛でて来た者を、自分の手で汚し落としてしまうという罪悪感。
けれども、そんな気持ちを凌駕するほど、が欲しい。
誰にも渡したくない。
だったら、その一番憎むべき役は俺がやるしかない。
それはの為ではなく、俺のためだ。
胸の下から徐々に手を滑らせ、双丘の下に辿り着いた。
キスをしている口の中で、が声を上げた。
息があがっている事は先ほどから承知している。
優しく唇を舐めた後で、そっと離れた。
銀に光る糸が2人の間に、わずかの間細い橋をかけた。
切れた橋の名残を追って、のあごから唇をキスで辿る。
「大丈夫か?」
目を見て尋ねたけれど、まともな応えは期待していない。
答えられない事は見れば分かる。
潤んだ瞳。
肩でする息。
俺に回している手の震え。
「、応えなくてもいいから頷いて。此処から先に進んでもいいのか?此処でなら止められるけれど、此処から先は最後まで止めてやる事は出来ないよ。」
「いいよ、・・・左近ちゃんなら。」
聞こえるか聞こえない声でそう返事をされた。
俺をつなぎとめていた最後の鎖が切れた。
胸の下辺りで止まっていた手を動かし、の片方の丘をそのまま包んだ。
少し力を入れて、その膨らみをもんでみる。
柔らかいのに張りがある。
押せばその力を押し返してくる。
すべらかくてしっとりしている肌。
触れるだけでなく、この目で見たい。
男は女よりも視覚の情報に弱い。
だから、グラビアで水着の女の子が微笑む事になる。
胸を触りながら、ローブの前を左右に広げて、薄明りに慣れた目で見下ろした。
きっと、明るい所で見たら、白い肌なんだろう。
今は柔らかなオレンジ色の光の下だから、生成りに見える。
まるで夜店で売っているあのコロンとした可愛いお菓子のような。
シミのない肌に痕を残したい要求が高まる。
首筋に顔を埋めて唇で啄ばみ、舌で舐める。
そのまま顔を下にスライドさせて、からも見える所に吸い付いた。
一点だけをキュッときつくして、そっと離れてそこを見る。
うっ血による紅い痕がそこに綺麗に残った。
「、これ見てご覧。」
綺麗に残った痕を彼女に見せる。
「が俺のだという印(しるし)だよ。他の奴が見る事はないけれど、もちろん俺が見せないけれど、俺とだけ見る事が出来る印だ。」
は自分の胸元を見て、その痕をそっと指で触れた。
「傷じゃないんだね。」
「ん、あぁそんな色をしてるもんな。うっ血の一種だよ。だから身体には害がない。日にちがたてば自然に消えるしな。」
「ふーん、そうなんだ。でも、なんだか嬉しい。」
「俺も。」
と視線が絡む。
自然に顔を近づけ唇を合わせた。
そのままもう一度、首や胸を辿りながらつぼみを初めて口に含む。
味なんかないはずなのに、甘く感じるのは何故だろう。
柔らかく瑞々しい果実のような感触に、夢中になる。
そしてすぐに訪れた感じている変化に嬉しくなってしまう。
もう片方を手で愛撫しながら、目だけの顔を見る。
辛そうで苦しそうな顔をしているけれど、それは快感に抗おうとしているからで、本当に苦しく痛いわけじゃない。
その表情にさえ感じてしまう。
だけど、もっと素直に受け入れて欲しくなる。
最初からは無理だろうから回数が必要か・・・と、俺の身勝手な期待は留まる所を知らないようだ。
これまで、次の逢瀬を考えた女は少ない。
その場限りか、絶対に面倒な事を言わない女か、そんな相手ばかりだったせいもある。
けれど、それはを手に入れるまでの暇つぶし。
女から見たら、酷い男の典型だ。
が俺みたいな男に遊ばれたりしたら、俺はそいつの事を絶対に許さない。
これには自信がある。
だから、俺はそうならないようにを守ってきた。
この矛盾した行動と気持ちも今日で終わりだ。
そう思うと、正直ほっとする。
そろそろと思って、それまでその上からなぞっていたレースで飾られた下着に手をかけ脱がした。
布一枚下が愛液で濡れているのは分かっている。
覚悟を決めたようにの瞼が閉じられる。
すがるように触れてくる彼女の手に、自然に自分の手を絡めて2人で誓いの形に手を握り合う。
指を忍ばせた場所は、予想通りに潤んで濡れていた。
感じていてくれた事への嬉しさと、これからの行為への期待。
手をつないだままで、の中心にある華へと愛撫を始める。
指をゆっくり入れて中を伺うと、今までと違う反応がから返る。
「力が抜けるように深呼吸してご覧。」
気休めに過ぎないことは分かっているけれど、少し慣らさなければならないから、力を抜くように言ってみた。
「だっ・・・駄目っ。」
「痛くない?」
「ん。」
身体が快感に着いて行かない。
そんな印象を受けた。
いまどきの女の子には珍しく、1人での処理もしたことがないのかもしれない。
あまりにも初心な反応に、こちらも戸惑う。
それでも、少女から女への階段を登りかけた身体は、こちらの愛撫に素直だ。
俺の方が辛抱が利かなくなって来て、ライトの下に置いておいたそれを、さっと自分につけた。
様子を見ての足の間に身体を割り込ませる。
蕩けさせて十分に濡らしたから、少しはましだろうと思う。
「、愛している。」
頬を触りながら、耳元でそう囁く。
「うん、私も。」
瞳には溢れんばかりに涙が湧いている。
キスの前に唇で涙を吸った。
そのとき抱いている感情で涙は味が変わるというが、のそれは媚薬になるに違いない。
頬にキスを落としながら唇に辿り着き、深いキスを落とす。
が身体に纏っていた緊張が緩んでくるのを感じて、俺自身をそっと華へとあてがって少し腰を進めた。
力任せに入りたいのを我慢して、ゆっくりと進む。
狭くてきつくてこちらにも痛みを伴う。
それでも、感じるのは何処までも甘美な責め苦。
最後までの口から拒絶の言葉は出なかった。
痛くて、苦しくて、辛いはずなのに・・・・・。
それを証明するかのように、涙は溢れて止まらない。
「、全部入ったよ。ごめんな、痛いんだろ?」
俺の問いには首を横に振った。
「痛くてもいいの。左近ちゃんとひとつになれたことの方が嬉しくて。それに比べたら、こんな痛みなんてたいした事ないもん。あきらめようとして泣いた時の方が、痛かったから。」
「うん、そうだな、俺もずっと痛いのを我慢してた。これから、少しずつ動くから・・・・。痛かったら言って。」
頷いて微笑んでくれたその唇に軽いキスを落とすと、俺はゆっくりと動き始めた。
もっと長くこうしていたいと思うのに、終わりはあっけないほどすぐに訪れる。
どうでもいい女との快楽だけのセックスとは明らかな違い。
心も身体も充足感で満たされる。
けれども、すぐに渇望が襲ってくる。
だけに感じる想いだ。
他の女には感じなかった想い。
俺的にはすぐにでももう一度OKなんだが、さすがに初めてのには無理だろう。
今夜は、この甘くすべらかな肌を味わうだけで我慢することにした。
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2005.11.02up
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